パリなのだ エピソード5

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歩き疲れて 
Bastilleで一人でコーラを飲んでいると
昔 友達が雨の日が好きだと言ったことを思い出した

それは 広げた傘の分だけ自分の空間ができる
すれ違う人達が自分の空間をよけながら
前から歩いてくる瞬間に
ああ 自分はこの世に存在しているのだと
なぜか安心するのだと言った

魂だ 光だ 宇宙だ 見えない力だなどと言ったところで
結局私たちは世間とつきあい 物とつきあい 世界と向き合い
もまれて ながされて けがされて きずついて
生きていかなければいけない
毎日毎日を一歩づつ歩いていかなければいけない
やっかいな毎日を

そこからのがれたいために
みえない力や愛や喜びや悲しみや苦しみだと言う
形にないものを見つめて 認めて 探し求めて
わたしたちは歌い 
それを形にしていくのだ
それが 実現したときや 腑に落ちた時
傷ついたこころがふっといやされ
世間を 世界を そして自分自身を
許せたりするのだ 

歩き疲れてここでコーラを飲んでることや
ライブをしにパリにきていることを 
通り過ぎていく人達は
だれ一人としてわたしのことを知らない
わたしの存在に気づかない
なんのしがらみも束縛もない瞬間
そんな時に限ってなぜかとても大事な人を
思い出したりするのは
わたしはやっぱり一人では生きていないのだ
と言うこと
こうして 明日も あさっても しあさっても
誰かのために 何かのために
歩いていかなければいけないのだ
と言うこと

Bastelleで一人でコーラを飲んでいる
ライターを貸してくれとフランス語で声をかけられた

わたしは今日も こうして 生きているのだ

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